GAME TESTING
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第4章:サウンドテスト

4.1 ゲームのサウンドコンテンツの特徴


は、現代のゲームにおいて欠かせない要素のひとつです。
音楽や効果音は、ゲームの雰囲気を高め、危険の予兆を知らせたり、キャラクターの感情を表現したりすることで、ゲームの世界をより豊かに彩ります。

もし映画やゲームに音がなかった場合、多くの人は違和感を覚えるでしょう。
これは、脳が音の情報を期待しているにもかかわらず何も聞こえないため、「知覚の不整合」が発生し、目の前の状況を正しく認識できなくなるからです。

音の品質が低かったり、場にそぐわない音が使われていたり、不完全な音が流れたりすると、プレイヤーのストレスとなり、没入感を損なう可能性があります。


ゲームのサウンドトラック制作には、多くの時間と労力がかかります。
これは、ゲームの構成が複雑であり、それに応じたサウンド設計が求められるためです。

具体的には、以下のような要素が含まれます。

● 環境音
● キャラクターボイス
● BGM(背景音楽)
● SE(効果音)
● 各種サウンドオブジェクト
● 音声ファイル(ナレーションやアナウンスなどを含む)

これらの要素があるため、サウンドテストも非常に複雑になります。


4.1.1 音の種類


ゲームにおけるサウンドデザインは、作品ごとに異なり、それぞれの目的に応じて設計されています。
ここでは、「どのような種類の音があるのか」「それぞれの音がどんな役割を果たすのか」「どのような目的で作られるのか」について説明します。


音楽


ゲームのメインテーマとなる音楽は、そのゲームを象徴する要素のひとつであり、シンプルなゲームでも取り入れられています。
レトロな8bitゲームのメロディが今でも多くの人に親しまれているように、印象的な音楽はゲームの記憶に残りやすい特徴があります。

音楽の主な役割には、次のようなものがあります。

● 重要なシーンの「壮大さ」を強調する
● イベントの緊張感やスピード感を高める
● ゲームの雰囲気を高める
● プレイヤーの気分を盛り上げ、キャラクターの感情を説明・補完する
● 繰り返し流れるメロディによって、特定の感情を呼び起こす


効果音


ゲーム内に多くのインタラクティブなオブジェクト[1]がある場合、それぞれにリアルな効果音を用意する必要があります。
適切な効果音によって、ゲーム世界がよりリアルに感じられます。

たとえば、ドアを開ける音、打撃音、武器の発射音やリロード音、回復アイテムの使用音、爆発音、ガラスが割れる音など、すべての音は適切なタイミングで再生される必要があります。

小規模なゲームであっても、ボタンやスイッチ、メニュー操作といったUI要素に効果音を加えるのが一般的です。
これにより、プレイヤーは自身の操作がゲームに反映されていることを直感的に理解できます。

[1]インタラクティブなオブジェクト
プレイヤーが触れる、押す、開ける、壊す、拾う、動かすといったアクションが可能なゲーム内の物体のことです。

フォーリーサウンド ( キャラクターの動作に対応した効果音 )


キャラクターが発する音には、服の擦れる音、呼吸音、叫び声、足音、うめき声などがあります。
これらの音は「フォーリー」と呼ばれます。名称は映画界で音響効果の先駆者となったジャック・フォーリーに由来しています。

一部のゲーム(特にシューティングゲーム)では、このような音がキャラクターの状態を伝える指標になっています。
これによりプレイヤーは表示される「ダメージ数値」よりも直感的に状況を理解しやすくなります。


セリフ


キャラクターのセリフも、独立したカテゴリとして扱われます。
現代のゲームでは、多くのNPCにプロの声優が起用され、セリフが吹き込まれています。

開発者は、キャラクターの感情を正確に表現し、プレイヤーとキャラクターの間に感情的なつながりを生み出すために、音声収録に多大な資金と労力を投入しています。


環境音


環境音とは、特定の場所で自然に流れる音のことで、ゲームの雰囲気を高め、プレイヤーの没入感を深める役割を果たします。
音楽とは異なり、環境音には明確なメロディやリズムがなく、周囲の情景や空気感を自然に伝える役割があります。

環境音は特定の音源を持たず、ゲーム内の場所や状況、ステージの進行に応じて流れます。
通常は背景音として扱われ、キャラクターの行動には影響を受けません

たとえば、以下のような音が含まれます。

● 森の中での葉擦れや鳥のさえずり
● 海辺での波の音
● サルーン(酒場)での人々の談笑
● パトカーのサイレンや通り過ぎる車の音 など

これらの音は、プレイヤーがゲーム内の環境をよりリアルに感じ、没入感を高めるための重要な要素となります。


4.1.2 効果音と技術


サウンドトラックは、音声編集ソフトを用いて加工され、現代のオーディオ技術を活用して制作されます。

プレイヤーをゲームの仮想世界に没入させるには、単に現実の音を使うだけでは不十分な場合があります。
そのため、開発者は特定の音を意図的に誇張(ハイパーリアル化)して使用することがあります。

この手法は映画のアクションシーンなどでよく用いられており、たとえば殴打音や動作音が現実よりも強調されて響くようになっています。

こうした効果を実現するために、さまざまな技法や技術が活用されています。


遮音 ( オクルージョン ) 効果


最も一般的な技法の一つが「遮音効果」です。

これは、音が壁などの障害物を通過するときに発生する現象を指します。
リアルさを再現するためには、単に音量を下げるだけでなく、音質にも変化を加える必要があります。

たとえば、壁の向こうから聞こえる音は直接聞こえる音とは異なり、こもったような響きになり、高音域が減衰します。
これにより、プレイヤーは音が障害物を通過していることを自然に感じ取ることができます。

【参考情報】
実際の開発現場では「遮音効果(Occlusion)」と「音響障害(Obstruction)」は区別されます。

遮音効果:壁やドアなどによる音の減衰と音質変化
音響障害:部分的に遮られた場合の音響変化

また、FMODやWwiseといったサウンドミドルウェアでは、単なる音量調整ではなく、 リアルタイムでフィルター処理(例:高音カット、低音強調)を施すことが一般的です。

残響 ( リバーブ ) 効果


残響効果」は、空間の広がりや奥行きを表現するために使用されます。

閉鎖された空間では、音が壁や天井に反射し、多重エコーを発生させながら徐々に減衰します。

たとえば、キャラクターが洞窟や狭い部屋など、音が反響しやすい環境にいる場合に特に効果を発揮します。
現代のサウンドエンジンでは、銃声や爆発音、足音、声などにエコー効果を付与することで、より立体感のある音響表現を実現しています。


バイノーラル効果


バイノーラル効果」は、ラテン語の「bini(二つの、対)」と「auris(耳)」に由来し、人が両耳で同時に音を聞くことを前提とした効果です。

この効果を再現するために、特殊なバイノーラルマイクを用いて録音を行います。
この効果を正確に体感するには、ヘッドフォンの使用が推奨されます。
ヘッドフォンで再生することで、音が左右の耳に微妙な時間差で届き、音源の方向や距離を自然に感じ取ることができます。

この技術により、プレイヤーは敵の位置や環境音の方向を直感的に把握できるようになり、没入感が飛躍的に向上します。
たとえば、音を頼りに敵の位置を把握できるようになるなど、ゲーム体験を向上させる要素となります。


4.1.3 サウンドエリア


一部のゲームでは、特定エリアごとに専用の音環境を設定する「サウンドエリア」が採用されています。

たとえば下記のようなものがあります。

● RPGでキャラクターが村に入ると、村独自の環境音やBGMが流れる
● ストラテジーゲームで自陣の近くにカメラを寄せると、資源採集の音が聞こえてくる

サウンドエリアでは、適切に音を切り替えることが重要です。
エリアの境界付近では、現在のエリアの音を徐々にフェードアウトさせ、新しいエリアの音をフェードインさせることで、違和感なく切り替わるようにします。

サウンドエリアの仕組みを現実に例えるならば、自分の部屋の窓を開けたり閉めたりすることで実感できます。
窓を開けると外の音がはっきりと聞こえ、閉めると外の音はほとんど聞こえなくなる、あるいはかなり小さくなる、といった現象がこれに該当します。


4.2 サウンドコンテンツの欠陥の種類


サウンドコンテンツには、主に以下の3種類の欠陥が発生することがあります。

● 音が再生されない
● 誤った音が再生される
● 正しい音が正しく再生されない


音が再生されない


特定のキャラクターの動作や特定のタイミングで、本来再生されるべき音再生されない現象です。


誤った音が再生される


オブジェクトや環境に設定された音が適切でない場合に発生します。

● 大砲の発砲音がピストルの発砲音のように聞こえる
● モーターボートの音が飛行機のエンジン音のように聞こえる
● キャラクターが本来発するはずのないセリフを喋る、または別のキャラクターのセリフが誤って割り当てられている
● 音が歴史的に不正確である(例:T-34戦車がT-72戦車の音を出す)

特にリアリズムや歴史的正確性を重視するタイトルでは重大な欠陥となります。


正しい音が正しく再生されない

音が途切れる
音が途切れる
一部の音が途中で消える現象。通信状態が悪い電話のような聞こえ方になります。
例:会話のセリフが途中で途切れ、プレイヤーが内容を理解できなくなる。
音飛び
音飛び
音楽や効果音が途中で飛ぶ(スキップする)現象。
原因:サウンドファイルの破損、またはパフォーマンスの問題(フレームレートの低下)。
音の歪み
音の歪み
パフォーマンスの問題により、一部の音が割れたり歪んで聞こえる現象。
音の遅延
音の遅延
アニメーションやオブジェクトの動きに対して、音が遅れて再生される現象。

サウンドコンテンツの欠陥例とその原因

音が再生されない
オブジェクトや環境音が再生されない
例:金属の床の上を歩いても足音が鳴らず、キャラクターが無音で移動する。
原因:該当する床に音の設定や接続が抜けている。
音量が不適切(大きすぎる/小さすぎる)
オブジェクトや環境音の音量が適切でない
例:燃えているオブジェクトの火の音が極端にうるさい、またはほとんど聞こえない。
原因:サウンドエフェクトの音量設定が不適切。
誤った音が再生される
誤った種類のサウンドが割り当てられている
例:モーターボートに乗っているのにレースカーの音が鳴る。
原因:誤ったサウンドファイルがオブジェクトに割り当てられている。
音の位置情報が正しくない
音の発生位置が正しく設定されていない
例:鍛冶屋が目の前で剣を打っているのに、部屋の隅から音が聞こえる。
原因:サウンドエディタで音源位置が誤って設定されている。
音の聞こえる範囲が不適切
音の聞こえる範囲が不適切
例:銃声がすぐ近くでしか聞こえず、少し離れると完全に消える。
原因:サウンドの可聴範囲(半径)が狭すぎる設定になっている。
音の歪みやノイズ
音の歪みやノイズ
例:音声がバリバリと割れたり、ノイズが混じる。
原因:サウンドファイルが破損しているか、エンコードに問題がある。
音がループして止まらない
音がループして止まらない
例:一度再生された効果音が止まらずにループし続ける。
原因:サウンドのループ終了条件が適切に設定されていない。
音の途切れや断続的な再生
音の途切れや断続的な再生
例:キャラクターが移動中に足音が途切れたり不安定になる。
原因:サウンド処理に関する設定ミス、またはゲームクライアントの処理遅延。
音声の再生遅延
音声の再生遅延
例:ムービーシーンでキャラクターの口の動きとセリフの再生がズレる。
原因:音声ファイルの再生タイミングとアニメーションの同期が取れていない。

4.3 ゲームにおけるサウンドコンテンツのテスト方法


ゲームのサウンドデザインには、効果音、キャラクターの音声、音楽などが含まれます。

ゲームの音声コンテンツのテスト方法には、形式的な手法非形式的な手法の2種類があります。

形式的な手法では、「音声ファイルの有無」「正確性」「音量」「整合性」などをチェックします。
非形式的な手法では、ゲーム内の音が演出意図に合致しているか、雰囲気を適切に伝えられているかを確認します。

たとえば、ホラーゲームでは「不安をかき立てる」ような音楽を流すことで、プレイヤーに緊張感を与える演出を行います。


テスターはサウンド仕様書(どの場面でどの音が再生されるべきかを記載したドキュメント)をもとに、テスト計画を立てます。
仕様書をもとに「どのシチュエーションでどの音が再生されるべきか」を正確に把握することが求められます。

場合によっては、オーディオデザイナーと連携し、音の仕様や意図を直接確認することもあります。
また、ゲームのリソース編集ツールを活用し、音声ファイルプレイヤーの操作ゲーム内の状況が適切に連動しているかをチェックすることも重要です。

ゲームにおけるサウンドテストでは、これらの手順を段階的に進めながら検証を行います。


4.3.1 サウンドコンテンツのテスト


テスターは、サウンドエディター[2]や ゲームのリソースエディター[3]を使用し、音声を聞きながら各パラメータを確認します。
全ての音声ファイルがテスト対象となり、この工程は非常に検証範囲が広く、時間と労力がかかります。

以下の点について、サウンド設定が正しく行われているかを検証します。

[2]サウンドエディター
ゲーム内で再生される効果音や音声の再生位置、音量、ループ設定、再生タイミングなどを編集・確認するためのツール。
音声の演出調整や不具合の再現検証にも使用されます。

[3]リソースエディター
ゲーム内に使用されている素材(画像・音声・アニメーション・テキストなど)を一覧表示・編集・管理できるツール。
開発中のコンテンツを個別に検証する際に利用されます。
音がオブジェクトや状況に適しているか
音がオブジェクトや状況に適しているか たとえば、キャラクターが鉄の鎧を着ている場合、移動時には布の擦れる音ではなく、金属音が優先されて聞こえるべきです。
また、爆発音や落石の音が小さすぎると迫力が失われ、
砂の上を歩いているのにコンクリートを踏むような音がする場合は、没入感を損なう原因となります。
キャラクターの音声が設定に合っているか
キャラクターの音声 全てのセリフは、そのキャラクターの設定やゲームの世界観に適した声でなければなりません。
通常、声のトーンや話し方は、キャラクターの性別や年齢、背景設定に合ったものである必要があります。
たとえば、地方出身のキャラクターには独特のアクセントがあるかもしれませんし、
時代背景によって話し方が異なることもあります。
耳障りな音が発生していないか
耳障りでないか 複数の音が重なった際に、耳障りなノイズや不協和音が発生していないかを確認します。
音量バランスが適切か
音量バランス ゲーム内で複数の音声ファイルを使用する場面では、それぞれの音量レベルが統一されているかを確認します。
効果音が正しく適用されているか
効果音 環境音やキャラクターの動作に応じた効果音が正しく設定されているかを確認します。
たとえば、大規模なオフィスでは、PCの動作音、プリンター音、エアコン音、キーボードの打鍵音、職員たちの会話など、
様々な環境音が自然に混在しているべきです。

適切な音声設計がされていることで、ゲーム世界のリアリティは格段に向上します。

たとえば、プレイヤーが村にいる場合、必ずしも牛の鳴き声が必要ではありませんが、
目の前に製材所があるなら、木材を切る音が聞こえるほうが自然で、リアリティが増します。

たとえば、森の中の小さな小川には音がなくても違和感は少ないかもしれません。
しかし、滝のそばで水の流れる音が一切しない場合、それは明確な欠陥と判断されるでしょう。


4.3.2 音楽とゲームサウンドのミックステスト


プロジェクトの規模や開発チームのスキルは案件ごとに異なるため、担当業務の境界が曖昧になることもあります。

たとえば、声優が不要なプロジェクトや、効果音制作をフォーリーアーティスト(音響効果の専門家)ではなく、オーディオデザイナーが効果音制作を担当する場合もあります。
場合によっては、一人の専門家が音の制作から既成サンプルの購入、ゲームクライアントへの組み込み、テストまですべてを行うこともあります。


オーディオデザイナーの主な役割は、音の制作と音声ファイルの録音です。

これらのファイルは、さまざまな環境で正しく再生されるかどうかテストする必要があります。

たとえばアーケードゲームの音響システム携帯電話のスピーカーとは音の聞こえ方が大きく異なるため、
それぞれの設置環境に応じた音のテストが必要です。
また家庭用ゲームでは、小型テレビの内蔵スピーカーとホームシアターシステムの両方で音が適切に再生されるかを確認する必要があります。


どれほど質の高い音でも、最終的なミキシングが適切でなければ、プレイヤーに違和感や不快感を与えてしまう可能性があります。
たとえば、アクション音が動作よりも長く再生されたり音量バランスが崩れていたりすることで、違和感を与える場合があります。


テスターはゲームエンジンに組み込まれたリソースエディタ自身の経験提供された仕様書を活用し、ゲーム全体のサウンドのバランスをテストします。
また、新しい音が追加された際には、変更が適切に反映されているかを検証します。


プレイヤーはゲームプレイ中、さまざまなオブジェクトの音やバックグラウンドミュージックを同時に聴くため、すべての音が調和していることが重要です。
テスターは、音量バランス、音質、自然な聞こえ方を常識的な観点から評価し、違和感のある箇所を特定します。

また、音源の発生位置がオブジェクトの位置と一致しているかも確認する必要があります。
たとえば、キャラクターがドアを開けたときに、開く音がキャラクターの背後から聞こえるようでは不自然です。

さらに、テスターは音が適切なタイミングで再生されているか(動作や演出との同期が取れているか)を確認する必要があります。


4.3.3 音楽コンポジションのテスト


コンポジション(編曲)ミキシングは、録音済みの個別トラックを編集・加工し、最終的な音源を作成する工程です。

通常は、録音工程の後に、収録された音声を選別し、必要に応じて修正・編集を行い、すべてを統合してエフェクト処理を加えます。
この「編集作業」は、独立した作業工程として行われることも多いです。


ゲームで電子音楽を使用する場合、音楽の制作が完了した後にミキシングを行います。
電子音楽では、録音工程を経ずに直接音を生成する場合が多く、制作とミキシングの工程が曖昧になる傾向があります。

多くの電子音楽用シンセサイザーには、あらかじめ音のテンプレートが用意されているため、
プロジェクトはすでにある程度ミキシングされた状態で最終調整に入ります。

最終的に、多くの音を含むプロジェクトはモノラル、ステレオ、または多チャンネルの音源として出力され、
マスタリングと呼ばれる最終的な音質調整工程を経て完成します。

マスタリングが完了したら、完成した音楽のテストが行われます。

● 音質の欠陥(こもり、劣化など)
● 音の途切れ(再生中に音が断続的に消える)
● ノイズや干渉(ブツブツ音や予期せぬ音の混入)
● その他の不具合(音ズレ、片耳再生など)

テスト中に不具合が発見された場合は、サウンドデザインチームに報告し、修正対応を行います。


4.4 サウンドテストの実行

4.4.1 ゲーム開発の各段階における音楽・サウンドのテスト


開発者がキャラクターやアイテム、マップなどを作成している段階では、まだ音が用意されていないことがあります。
この時点では音が設定されていなくても、見た目や動きが完成しているため、テストの準備は整っています。

音のサンプルは、それを制作した専門家(オーディオデザイナー、フォーリーアーティスト、サウンドエフェクト担当など)によって事前にテストする必要があります。
個別のサウンドに対してテストが行われ、問題がなければ開発チームに送られ、そこからゲームクライアントへの統合が進められます。


4.4.2 ゲームへのサウンドの統合


サウンドデザインがゲームに統合された後、テスターは以下のサウンドの特性を評価します。

● サウンドや音楽のオン・オフ切り替えができるか
● 音量調整機能が適切に動作するか
● オーディオファイル名が一貫したフォーマットであり、プロジェクト内のフォルダに正しく配置されているか
● 音源の位置や、ゲームマップ上での音の伝播距離が正しく設定されているか
● サウンド統合後にゲームシステムのパフォーマンスが劣化していないか
● ヘッドフォン、スピーカー、モニタースピーカーなど、異なるオーディオ機器で適切に再生されるか


4.4.3 関与する人々の責任範囲


ゲームプロジェクトにおける音楽およびサウンドデザインの制作プロセスには、それぞれ異なる専門的な役割を担う多様な専門家が関わっています。

作曲家(Composer)
作曲家(Composer)
ゲーム用の音楽を作曲・制作する役割を担います。
オーディオエンジニア(Audio Engineer)
オーディオエンジニア(Audio Engineer)
サウンドの録音や音響機器の操作・調整を担当します。
サウンドエンジニア(Sound Engineer)
サウンドエンジニア(Sound Engineer)
サウンドに関する高度な専門知識を活かし、
ゲーム内の各オブジェクトやシーンに最適な音響バランスを調整します。
オーディオデザイナー(Audio Designer)
オーディオデザイナー(Audio Designer)
録音した音素材(サンプル)を基に新しいサウンドを作成し、編集ソフトを使用して最適な形に仕上げます。
フォーリーアーティスト(Foley Artist)
フォーリーアーティスト(Foley Artist)
現実に存在する音を臨場感ある形で再現し、存在しない効果音も創作します。
例:音を組み合わせてレーザー剣の効果音やゾンビのうなり声、ポータルが開く音などを作成します。
声優(Voice Actor)
声優(Voice Actor)
音声セリフを持つキャラクターの声を演じて命を吹き込みます。
開発者(Developer)
開発者(Developer)
制作されたサウンドコンテンツをゲームのプログラム内に組み込み、適切に再生されるように実装します。
レベルデザイナー(Level Designer)
レベルデザイナー(Level Designer)
各ステージ内にサウンドエフェクトを配置し、適切なオーディオファイルと関連付けます。
ナラティブデザイナー(Narrative Designer)
ナラティブデザイナー(Narrative Designer)
ストーリー進行に関わる場面(カットシーン、イントロ、会話、重要イベントなど)で使用される音楽や効果音の選定・演出を担当します。
ゲームデザイナー(Game Designer)
ゲームデザイナー(Game Designer)
ゲームのルールや特徴を文書化し、プロジェクトのビジョンを策定します。
開発初期段階では全体的なゲーム設計を行い、開発中もゲームの方向性が維持されるよう監修し、
必要に応じてテストにも参加します。
テスター(Tester)
テスター(Tester)
完成したサウンド全体と、新たにクライアントに統合された音の再生が正しく行われているかを検証します。

4.4.4 サウンドオブジェクトテストの手順と手法


サウンドテストでは、テスターがゲーム内の音声が正しく設定・機能しているかを確認します。
テスト内容は対象となるオブジェクトによって異なります。

たとえば、新しい武器のサウンドテストでは、以下のような手順を実施します。

● ゲームクライアントに武器を追加(未実装の場合)
● テスト用のマップに新しい武器を配置
● 武器に関連するすべての音(発射音、リロード音、再リロード音、発射モード切替音など)が正常に再生されるか確認

テストするオブジェクトごとに手順は異なります。
たとえば、キャラクターが直接触れない環境音(川のせせらぎなど)をテストする場合は、対象エリアに近づき、音が正しく再生されるかをチェックします。

テスターは、各オブジェクトに関連付けられている全ての音情報を把握しておく必要があります。
また、ゲーム内のリソースエディタやサウンドエディタを使用して、音声がキャラクターや環境の動作と正しく同期しているかを検証します。


4.5 サウンドテスト用のツールサポート

ゲームエンジンのオーディオエディタ


テスターがゲームエンジン標準のオーディオエディタを利用できるとは限りません。
そのため、通常はコンテンツ確認用ソフトウェアを使用してテストを行います。

オーディオエディタは、開発チームのテスターや音響専門家(作曲家、オーディオデザイナーなど)が利用します。
オーディオデザイナーは、レベルバランスの調整、イコライザ設定、ミキシング/アライメント作業を行いながらサウンドアセットのテストを実施します。
ゲームに音が追加された後、オーディオデザイナーは最新ビルドからすぐにサウンドファイルを抽出し、必要に応じて修正できる体制が求められます。

音声管理を効率化するために、下記対応が推奨されます。

● サウンドサンプルは別々のトラックに整理
● フォルダ構成、ファイル名付け、タイムスタンプ、バージョン管理を徹底
● 音声データを圧縮デジタルフォーマットへ変換し、ハードウェア負荷を軽減


マップ/ロケーションエディタ


テスターがマップエディタ[4]ロケーションエディタ[5]にアクセスできる場合もあります。
これにより、ゲーム内の音声配置テストやその他のコンテンツ確認がより効率的に行えます。
マップエディタでは、シミュレーションモードでのテストが可能であり、
ゲームクライアントに切り替えることなく直接必要な検証を実施できます。

これにより、テストの効率が大幅に向上します。

[4]マップエディタ
ゲーム内の地形や構造、オブジェクトの配置など、マップ全体のレイアウトを作成・編集するためのツール。ワールド全体や大規模なフィールドの設計に使用されます。

[5]ロケーションエディタ
マップの中の特定エリア(建物の内部や特定の部屋など)を詳細に調整するツール。環境音や照明、装飾オブジェクトなど、個別の演出要素の設定に使われます。

マップ上の多くの効果音や環境音は、レベルエディタ[6]を使用して配置・調整されます。

また、ここでテスターは以下を検証します。

● 各音源がどのオブジェクトやキャラクターに紐付けられているか
● 音の発生源が正しい場所にあるか
● 音の伝播距離が、球形(スフィア)またはゾーンとして視覚的に表示されており、仕様通りかどうか
● ゾーン形式の場合、境界を越えることで音が再生され、フェードイン/フェードアウトが自然に行われるか
● 音源に近づいたとき、段階的に音量が上昇し自然に聞こえるかどうか

[6]レベルエディタ
ゲームプレイが行われる単位(レベル、ステージ)を設計・構成するツール。敵やアイテム、イベントトリガーなどを配置し、実際のプレイ体験を構築します。

テスターはエディタを活用して、音の配置や広がり、設定が正しく機能しているかを確認し、問題があれば開発チームに報告します。
たとえば、以下のようなものがあります。

● 特定の音源の音量が、周囲の音より極端に大きい
● 伝播距離が短すぎて、一定距離を離れると不自然に音が途切れる

エディタを用いて問題点を明確に示すことで、開発者が修正すべき箇所を迅速に特定しやすくなります。



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